長野農業農村支援センター 荻原貴史さん
今年も昨年と同じように、3月は気温が高めに経過して、例年よりも早く信州にも桜の便りが届きました。長野地方気象台の発表では3月29日に開花して、4月1日には満開となりました。
いよいよ家庭菜園も本番を迎えますが、低温や霜の恐れもあります。今年のように3月が温かい年でも、平年通り5月中までは遅霜は降りる可能性があります。4月10日には長野市内でもマイナス5度まで下がった地域がありましたので、野菜の特性に合わせて、植え付けを焦らないようにしましょう。
今回は、ジャガイモとネギの植え付けについてお話します。
まず、ジャガイモです。ジャガイモは4月になると、種苗店やホームセンターで種イモが出回る、作りやすい野菜の1つです。品種が多くありますので、販売店でお好みの品種を選ぶところから楽しんでいただけることと思います。
種イモの植え付け時期ですが、凍霜害が心配なため標高によって変わってきます。標高の低い場所では早く、標高の高い場所ほど遅くなります。標高400m以下の善光寺平は3月下旬から、標高700mでは4月中旬頃からが目安です。
ジャガイモの生育は25℃以上になると抑えられ、29℃になるとイモの形成が停止しますので、暑い夏が来る頃に収穫できるように、遅れずに植え付けましょう。
上手に作るポイントは連作をしないことです。前の年にジャガイモや同じ仲間のナス科の野菜のナス・トマト・ピーマンなどを栽培した場所は避けましょう。毎年、圃場の作付け地図を描いておくと大変便利です。
植え付ける種イモは、1個30~50g程度とします。種イモは大きいほど、1株当たりの収量が多くなりますが、茎の数が多くなりすぎて、いもの揃いが悪くなります。このため大きい種イモは、芽が多くついている方を上にして縦に切り、この際必ず2個~4個の芽が付くようにします。種イモを切った後は、2~3日日陰で乾かしてから植え付けます。
植え付ける幅は60~70cm程度、株間は30cm程度が標準で、種イモは芽を上にして植え付け、5cm程土をかけます。凍霜害が心配な場合は8cm程度のやや深植えにしましょう。
4月下旬からはネギの植え付け時期になります。酸性土壌では生育が悪くなるので、苦土石灰などを施用します。石灰質資材は、植え付けの2週間以上前にまいて、土とよく混ぜ合わせてください。
植える際は、深さ20cm、幅20cm程度の溝を掘り、苗を3~5cm間隔に並べて土をかけます。この時、植える側の溝の側面は垂直にし、かける土の量は3cmくらいの少量にします。植え付けてから1ヶ月後ころから、土寄せを行います。土寄せと合わせて追肥を行うと効果的です。また、栽培期間が長い野菜ですので、年間の作付け計画を考えて、圃場内で邪魔にならない場所を選びましょう。
ハツカダイコンは3月下旬から、ホウレンソウ・コマツナ・チンゲンサイは4月中旬くらいから、コカブは4月下旬ころから種まきができます。真夏の高温条件では栽培が難しいので、早めに準備しましょう。
エダマメやスイートコーンは、遅霜の危険がなく気温が上がってくる5月上旬頃からが種まきの適期です。早生品種から晩生品種を組み合わせると、長い期間収穫できます。
家庭菜園の主役である、キュウリやトマト・ミニトマトは、低温や遅霜には弱く、最低地温が13℃以上となる頃が植え付け時期となります。ナスやピーマン類はキュウリやトマトよりも高温を好むので、最低地温17℃以上が目安です。
ホームセンターなどでは早い時期から苗が売られていますが、高い地温が必要ですので、温度が上がるのを待ってから植え付けるようにしましょう。低温への対策としては、穴あきのビニールを使ったトンネル苗キャップ、あんどんなどがあります。また、地温の上昇にはポリマルチが効果的で、雑草防除にも効果のある黒色のポリマルチがおすすめです。
苗を植えるのは、風がなく穏やかな日の午前中が適しています。接ぎ木苗の場合は、接ぎ木部分が土の中に入ってしまうと、接ぎ木の効果がなくなります。苗の培土の表面と植え付け床の表面の高さが同じくらいになるように植えます。
トマトでは、アブラムシで伝染するウイルス病が問題となります。ウイルス病を防ぐには、植え付け初期のアブラムシ防除がポイントになります。植え付け時にアブラムシに効果がある殺虫剤を植穴に処理するか、防虫ネットで畝を1ヶ月くらい覆うのも対策になります。農薬を使用する際には、必ず容器に書いてある事項を確認して、記載どおりに使用してください。
最後に農作業安全についてお話します。
春先は枯れ草を焼くことによる火災や死亡事例も多く発生しています。家庭でのたき火は禁止です。また、作業が始まると管理機等の機械や道具に触れる機会が多くなります。特に管理機などの歩行型トラクターでバックする際は、周囲の安全確認をしっかり行いましょう。回転部への巻き込まれ、機械に挟まれる死亡事故が多く発生しています。十分注意しましょう。
農業機械の使用に当たっては、始業点検や周囲の安全確認をしっかりして、作業は余裕を持って行いましょう。点検や異物を除去する際は必ずエンジンを停止させましょう。
一人での作業はなるべく避け、休憩を十分に取り、家族や友人同士みんなで声を掛け合うことが大きな事故を防ぐことになります。きりのいいところまでと焦って作業をせずに、次の日に持ち越す様にゆとりをもって楽しい菜園にしましょう。