取材ノート
「今月の健康」
~運動と体内時計~
犀南保健センター
新緑の美しい季節になりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は運動と体内時計についてお話します。
『運動』が体に良いことはわかっていても、運動をする時間が取れない方や、運動が苦手な方もいらっしゃるでしょう。また、新型コロナウイルスの影響で、自宅で過ごす時間が多くなり、睡眠や食事の時間も不規則になり、体内時計のリズムが崩れてしまった方も多いのではないでしょうか。
体内時計は生体リズムを調整しているメカニズムの1つで、植物・昆虫・人間を含む哺乳類など、地球に住むすべての生物に備わっています。
生物は地球の自転による24時間周期の昼夜変化に同調して、ほぼ1日周期で体内環境を積極的に変化させる機能を持っています。
人間の、朝になると目が覚め、日中は活動し、夜になると眠くなる基本パターンは体内時計の働きによるものです。
体温や血圧・ホルモン分泌などを調節している体の基本的な機能の調整もして、自律神経のバランスを整えたり、脳内の神経伝達物質やホルモン分泌が整うと、精神の安定や集中力が高まります。
体内時計は左右の目の奥にある視床下部の中の一部にあります。
人間を含む哺乳類には目の網膜から体内時計への直接の神経があるため、朝の強い光が目に入ることで、体内時計に朝であるということが伝わります。逆に夜の光は体内時計を遅らせる傾向にあり、生活が不規則になったり睡眠のリズムが狂ったりします。
体内時計を正常に動かすためには、規則正しい生活が欠かせません。体内時計の調節のためには、寝る時間よりも起きる時間の方が重要です。体内時計は朝日を浴びてから14~15時間後に自然と眠くなるようにセットされています。できるだけ夜更かしはさけて、早寝早起きを習慣とすると良いでしょう。
規則正しく生活したいと思っていても仕事や家事などさまざまな状況によって実行できないことも多いでしょう。そうした場合には、毎週同じ曜日や1週間のうち1~2日だけでもリズムを整えることで体内時計のずれをリセットしやすくなります。
運動は体内時計を調節する要素の1つです。食事の改善や禁煙とならんで、生活習慣病の予防に有効であるとされています。適度な運動は体力を養い、心臓や肺の機能、体の抵抗力を高めたり基礎代謝を向上させ、内臓の脂肪を減らす効果があります。気分転換やストレス解消になるため、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことも認められています。
『運動』というとスポーツやフィットネスセンターで身体を動かすことをイメージするかもしれませんが、10分程度の歩行を1日に数回行うことを続けるだけでも健康上の効果が期待できると言われています。
例えば、休日に子供と遊んだり、掃除や園芸など家事をすることも、自宅での運動の時間を増やす手段となります。できるだけ立っていることで、座っている時間を減らすことも効果的です。電話をしている時、会話中は家の中を立ったり歩いたりする、読書などの余暇の時間にも立っている時間を作ると良いでしょう。自宅などの狭いスペースでも歩き回ったり、その場で足踏みをすることで運動と同じ効果を得ることができます。ただし、外を歩く場合には感染予防のため、他人との距離を2メートル程度は空けるようにしましょう。
現在、治療している病気がある方は、運動に制限が出てくることがありますので、かかりつけの医療機関に確認してから運動に取り組みましょう。また、治療中の病気がない方でも、これまで運動経験のない人が急に運動を始めようとすると、心臓や膝などの関節に負担をかけることもあるので、無理のない程度に行うようにしてください。
コロナウイルスの影響で密閉空間・密集場所・密接場面を避けた生活が求められていますが、自宅で過ごす中で、運動や体内時計への意識を高め、この期間を元気に乗り切りましょう。