長野農業農村支援センター 後藤田葵さん
2022年12月放送
厳しい寒さの中、冬の陽だまりがことのほか暖かく感じる候、皆様どうお過ごしでしょうか。寒さといえば、野沢菜などは寒さにあてる『寒じめ』をすることで甘くなります。これは植物が凍らないよう糖分をため込むことで甘くなると言われています。
さて、今日は1年間の気象の振り返り、土づくりや堆肥の話、来年の計画と連作障害についてお話します。
まずは1年間の気象を振り返ってみましょう。
1~2月は、平年よりも気温が低い冬となりました。3月中旬から5月までは気温が平年よりも高く、晴れた日が多くなったため、一昨年・昨年で発生していたりんごや植え付け直後の野菜等での凍霜害はあまり発生しませんでした。
6月上旬は気温が平年を下回り、降水量は多かったですが、6月中旬から7月上旬には、晴れの日が続き、降水量は少なく日照時間が多くなりました。6月下旬には、気温が上昇し猛暑日を観測した地点が多くあり、27日には気象庁が関東甲信で『過去最も早い梅雨明け』を発表しました。
そのため、しばらくは晴れた日が続きましたが、7月中旬から大気の状態が不安定となって曇りや雨の日が多くなり、梅雨明けも7月23日に修正されました。
8月中旬から9月にかけても、台風や前線、湿った空気の影響で曇りや雨の日が多くなりました。平均気温は暖かい空気に覆われやすかったため高くなり、暑い夏になりました。
特にここ数年、乾燥が続いたかと思えば雨ばかりといった極端な気象変化がある年が続いています。お天道様にはかないませんが、少しでも気象変化に影響されずに野菜等を栽培するために、根をしっかり張らせることが最も大切なことです。そのためにも土づくりを丁寧にしましょう。
土づくりで大切なポイントは土を深く起こすことと、堆肥の施用により土をやわらかくし、水はけを良くすることです。
まずは、土を起こす深さについてお話します。一般的な歩行型の耕運機や管理機で起こせる深さは10~15cm程度です。収穫の終わった畑を掘ってみると約30cmの深さまで多くの根が伸びていることがわかりますので、余裕のある時に様々な種類の野菜の根元を掘ってみるといいでしょう。一部の根はさらに深いところまで伸びていて、トマトは深さ1m以上まで根が伸びます。さすがに、1mの深さまで起こすことは現実的ではありませんが、耕運機や管理機で3回ほど耕せば、より深く起こすことができます。なるべく深く起こすことで畑の排水性の向上や根が張れる部分の増加が期待されますので、2年から3年に一度はできる限り深く起こして、しっかりとした根が張れる畑を作りましょう。
次に堆肥についてお話します。堆肥は排水性や保水性など土の物理性の改善や連作障害を緩和する効果がありますので、積極的に使いましょう。植物にとって水は必要ですが、滞水してしまうと根が呼吸できなくなり、腐ったり、病気の発生も多くなってしまいます。
堆肥の種類は動物由来のものから、植物由来のものなどが様々ありますので、種類に応じて投入量を調節してください。1㎡当たり1kg~3kgを目安に蒔き、必ず嫌な匂いのしない、完熟した堆肥を使用しましょう。
冬の間は次の作付計画を立てる時期です。どこに何を作るのか、どのくらい作るのか、そのために考慮して頂きたいことをお話します。
作付けの計画を立てる上で考えておきたいのは、同じ場所で同じ種類の野菜を作る『連作』をしないことです。連作をすると生育が悪くなったり、病気が出やすくなったり障害が出ます。できればハクサイ・キャベツ・ブロッコリー・ダイコンなどのアブラナ科野菜や、ジャガイモは2~3年間は同じ場所に作らないようにしましょう。果実を収穫する夏野菜は、さらにもう少し長く間をあける必要があります。トマト・ナス・ピーマンなどのナス科野菜、キュウリやスイカなどのウリ科野菜は、3年間は同じ仲間の作物を作らないようにしてください。
特にトマトやナスの青枯れ病などが発生してしまった場合は連作しないようにしましょう。
連作障害の影響が少ない野菜は、ネギ、タマネギ、サツマイモ、ニンジン、カボチャ、スイートコーン、オクラなどです。これらの作物をうまく組み合わせた輪作を意識した作付け計画を立てましょう。
連作や日当たりのことを考慮すると、限られた面積では難しいですが、畑を7区画くらいに分けて、2種類くらいの作物を組み合わせ、1年ごとに区画をずらして栽培すると、連作障害の心配が少なくなります。また、連作障害は堆肥を入れたり、耐病性品種や接ぎ木苗を利用することでも緩和できますので、面積が限られている場合には積極的に活用しましょう。
最後に、畑を耕す際は安全に十分注意して、事故がないように心がけましょう。特に耕運機などでターンをする際は障害物等のあるような狭い場所は気を付けましょう。
これからますます寒さが厳しくなります。体調管理にお気を付け下さい。