取材ノート
「JAアワーより」
~フレイルを知って介護を予防しよう~
JAグリーン長野 生活課 大日方瑞穂さん
今月のJAアワーは『フレイルを知って介護を予防しよう』をテーマにお話しします。
皆さんは『フレイル』という言葉を知っていますか。フレイルとは、加齢とともに、疲れやすさや体重の減少など、心身の衰えがみられる状態の事です。食べる量が減ってきた、何もしていないのに疲れる、外に出かけたり人に会ったりするのが面倒、こんな風に感じているなら、それはフレイルのサインかもしれません。新型コロナウイルス感染症の流行によって、外出や人づきあいが減るなど、生活に変化が起こっている今、フレイルに陥りやすいと言われています。
人は老いるとき、健康な状態から徐々に衰えて、介護が必要な状態へと至りますが、この中間地点に当たるのがフレイルなのです。フレイルやフレイルの兆候がみられる『プレフレイル』の状態をそのまま放置すると、介護が必要になる可能性が高まります。体力が落ちて活動量が減ると、食べる量が少なくなり、気力も低下、外に出る機会がますます減って、さらに足腰が弱る、という悪循環に陥るからです。できるだけ長く健康でいるためには、『年だから仕方ない・・・』と諦めず、フレイル予防することが大切です。
まず、自分自身にフレイルの危険性があるかどうか、チェックしてみましょう。いくつかチェック方法はありますが、今回は簡単にできる『指輪っかテスト』を教えますので、ぜひ今やってみてください。
両手の親指と人差し指同士をくっつけて、輪っかを作ります。そして、利き足ではない方の足のふくらはぎの一番太い部分を輪っかで囲んでみてください。ふくらはぎが太くて囲めない人や、ちょうど囲める人は、フレイルの危険度は低めです。反対に隙間ができた人は注意が必要です。
すらりと細い足は羨ましいかもしれませんが、65歳以上の場合、筋肉の衰えが原因の場合があります。筋肉量は20歳代をピークに、30歳代から減少していきます。全身の筋肉量が減少した『サルコペニア』の状態になると、身体機能の低下を招き、フレイルへとつながります。また、認知症や骨折のリスクも高まります。
指輪っかテストの結果はいかがでしたか。結果が良くなかったからといって落ち込むことはありません。生活習慣を見直せば、フレイルを予防・改善し、衰えを食い止めることができます。早ければ早いほど健康を取り戻しやすいので、気づいたその日から対策することが大切です。
フレイル対策には、運動、社会との繋がり、口の健康、食事、栄養の4つの柱があります。フレイル対策=運動と思いがちですが、それだけでなく、毎日の食事に気を付けたり、家族や友人との関わりを楽しんだりすることも、フレイル予防には欠かせない要素です。4つの柱それぞれを、今日から習慣にしていけるポイントをお伝えしますので、ぜひ試してみてください。
まず、運動でのポイントは、歩ける体を維持しましょう。フレイルが進行して一番困るのは歩けなくなることです。筋肉が衰えると自分の力で歩くことができなくなります。人の手を借りずに自由に移動するためには、筋肉量を増やす運動が欠かせません。歩く力をキープするためには、正しい姿勢でのウォーキングが最も効果的です。背筋をピンと伸ばして、しっかり腕を振ることで全身をまんべんなく動かすことができます。ちょっとした移動も運動のチャンスと考えて歩いてみてください。
次に社会との繋がりを持つことです。フレイルは、身体機能の衰えだけでなく、心や認知機能の衰えも絡み合って進行します。年を重ねると、子どもや孫が成長し交流が減ってしまったことや、近所に親しい付き合いができる人が少なくなったことなど、生活の変化に伴って人とのつながりが薄れやすくなります。
体の痛みやケガをきっかけに、地域の集まりや趣味の活動から足が遠のいてしまうこともあるでしょう。こうしてコミュニケーションの機会が減ると、認知症や気分の落ち込みを招いてしまうのです。家族との会話を増やしたり、誰かと一緒にご飯を食べる、新しい趣味を始めるなど、できることからはじめてみることで、孤独を防ぎ、社会とのつながりを実感できます。
次に口の健康です。硬いものが食べられなくなった、食事の途中でむせてしまうなどの症状が出たら、放っておくのは危険です。口は生きていくうえで欠かせない『食べる』行為や、コミュニケーションを担う大切な部位です。口の不調は、栄養状態の悪化や、ソーシャルフレイルの引き金となり、放置すると全身の機能低下にもつながります。食べ物をよく噛んで飲み込んだり、言葉を発したり、表情を作ったりといった口の役割は、筋肉の働きによって成り立っています。足腰の筋力が弱ると歩けなくなるのと同じように、口周りや舌の筋力が弱るとこれらの機能が十分に果たせなくなりますので、柔らかいものばかりではなく、歯ごたえのあるものをよく噛んで食べる事を習慣にしましょう。
最後に食事と栄養についてです。フレイルを予防するためには、とにかく摂らなくてはいけないのがタンパク質です。私たちの体の約20%はタンパク質からできており、筋肉、骨、内臓、血管、血液、皮膚、髪の毛を作るのに必須の栄養素です。タンパク質が不足すると筋肉量が落ち、運動機能が低下します。また、タンパク質は免疫や思考力にもかかわっているため、足りなくなると全身の衰えを招いてしまいます。タンパク質はお肉や魚、卵などから摂ることができます。そのなかでもお肉を食べることをお勧めします。タンパク質が多いだけでなく、噛み応えがあるため、口の筋肉が衰えるオーラルフレイルの予防につながります。一日一食でもお肉を食べることを意識してみてください。
今までの習慣を変えるのは、なかなか難しいことです。ですが、一人で行おうとぜず、家族やお友達と一緒に行うことで、少しずつ習慣を変えていく事ができ、フレイルの予防に繋がりますので、ぜひ実践してみてください。