取材ノート
「今月の健康」
~ 塩と腎臓の関係 ~
犀南保健センター
いよいよ暑い季節になってきて、熱中症対策として水分補給と共に塩分補給が勧められるようになってきました。その一方で、血圧をあげるので、塩の摂りすぎはいけないとも言われますが、摂りすぎると体にどのような影響があるのでしょうか?
今回は、塩と塩のことを話すのに避けては通れない腎臓の働きについてお話します。
『塩』は体の中で2つの役割を担っています。
1つ目は細胞を正常に保つ役割です。細胞の内と外との体液の浸透圧を調整して、バランスを一定に保つ働きをしています。このバランスが、食べ物から栄養素を吸収するために大切なのです。その結果、体内の水分量の調整がされて、血液の流れが良くなったり、体の水分が約60~80%程度に保つことができているのです。
2つ目は、神経や筋肉の働きの調整です。わたくしたちが体を動かす時、脳からの命令が神経細胞を伝わってきます。この電気信号を伝える働きをするのが、塩の成分であるナトリウムイオンです。
その他に適切な塩味は食欲を増進させ、塩の刺激によって、おいしさを感じる正常な味覚が保たれています。
これらの役割を担うために、体の中の塩の濃度は0,9%にほぼ保たれています。
そして、この塩の濃度を一定に保つ役割をしているのが『腎臓』です。腎臓は背中側の両側の腰の上に左右1個ずつある、にぎりこぶし大の臓器です。腎臓では、全身から集まってきた血液から白血球や赤血球、タンパク質以外をいったんすべて尿に捨て、そこから私たちの細胞に必要なものを血液に取り戻すという作業をしています。それによって老廃物と余分な水だけを尿として捨てています。この働きがうまくいかなくなると、老廃物を尿として出せなくなり、血液に残って全身に回ってしまいます。腎臓が正常に働いてくれることで、血液から老廃物が除かれ、体の細胞に必要な電解質のバランスが保たれるのです。
塩も私たちの細胞に必要なものとして、取り戻されます。塩の摂取量がちょうどいいと、腎臓では塩を取り戻すためのホルモンが正常に働き、適切な量の『塩』を取り戻すことができます。しかし、塩を摂り過ぎるとそのホルモンは正常に働かなくなってしまいます。正常に働かなくなると、塩を尿に捨てることができずに、必要な量以上に『塩』と『水』を一緒に取り戻してしまいます。そうすると、血液の量が多くなって血圧が上がります。その結果、高血圧になったり、血管が傷つけられたりします。ちなみに、肥満の場合も塩を摂り過ぎてしまったときと同じことが起き、塩と水を余計に取り戻してしまいますので、注意が必要です。
さて、大切な働きをしている腎臓ですが、腎臓は脱水に弱いのでこの時期は脱水にも気を付けましょう。体の中の水分量が減ると腎臓に流れる血流も減って、老廃物をうまく排泄できなくなる可能性があります。脱水になる原因としては、大量に汗をかいたり、水分を摂らなかったり、アルコールなどの利尿作用によって尿量が増えるなどがあげられます。
アルコールは液体ではありますが、水分の代わりにはなりません。大量のアルコール摂取は脱水をおこすとともに、尿酸値を高くします。尿酸値が高くなると、尿酸が腎臓の中で結晶化し尿酸結石になって腎臓を傷める原因になります。暑い季節でビールなど、アルコールを飲む機会が増えがちですが、大量の飲酒を避け、1日1,5から2リットルの水分摂取を心がけましょう。
さて、今。塩の摂りすぎや脱水が腎臓を傷めるので注意しましょうとお話ししました。でも、腎臓を傷める原因は他にもあります。肥満、高血圧、高血糖、LDLコレステロールが高い、他にウィルスや細菌の感染などもあります。その中でも肥満、血圧、血糖、コレステロールの状態は特定健診で分かります。血液検査では腎臓の機能を推測できる項目もありますので、ご自分の腎臓の状態を知ることができます。尿検査では尿にたんぱくが出ていないかをみていくことが大切です。健診で尿蛋白が(+)以上出た方は、腎臓の細かい血管や老廃物を吸収する尿細管という部位が障害されている可能性があります。まずかかりつけ医に相談し再検査をしてもらいましょう。今年度の国保特定健診・後期高齢者健診は10月15日まで実施しています。忘れずに受診して腎臓を傷める要因がないか、ご自分の腎臓の状態はどうかチェックしましょう。