取材ノート
「JAアワーより」
~上手に冷凍して料理の幅を広げよう~
JAグリーン長野 生活課 大日方瑞穂さん
みなさん暑さに負けずに元気にお過ごしでしょうか。
今月のJAアワーは『上手に冷凍して料理の幅を広げよう』をテーマにお話します。
皆さんは冷凍庫をうまく活用できていますか?食材を冷凍すると、長期保存できるだけでなく、栄養価を保つことができたり、調理時間を短くすることができるというメリットがあります。さらに食材ごとに適した解凍をすれば、風味や栄養を保ちつつ美味しく食べられます。今回は冷凍や解凍方法をご紹介しますので、ご家庭でもぜひ試してみてください。
最初に冷凍をする際に必ず押さえてほしい4つのルールがあります。
1つ目は、新鮮なうちに冷凍することです。冷凍は『凍らせる前の状態を保つ』ための技術なので、『余ったから冷凍する』のは実は間違いなのです。収穫や購入後、なるべく早く冷凍したほうが解凍した時に美味しく食べられます。
2つ目は、同じサイズに切ることです。野菜などを冷凍するときは、なるべく同じ大きさにそろえておくことが大切です。こうすると、冷凍や解凍の時にむらが出ず、均一な風味や食感を保つことができます。
3つ目は、空気を抜くことです。食材は空気に触れていると、乾燥したり酸化したりして、劣化していきます。ラップをしっかり巻いてから保存袋に入れたり、手で押さえて空気を抜いたりするなどの対策をしてから冷凍室にいれましょう。
4つ目は、なるべく薄く平らにすることです。凍るスピードが遅いと、食材の細胞内に大きな氷ができて、細胞を破壊するため、食感や風味が悪くなります。短時間で凍らせればそうした事態は防げるので、保存袋に入れた食材はなるべく薄く、平らにしてから冷凍しましょう。
次に、冷凍した食材に合わせた解凍方法を5つご紹介します。食材に合った解凍方法をすることで、おいしさが変わります。
まず1つ目に、加熱による解凍です。野菜や貝類に適している解凍方法です。炒める、ゆでる、蒸すなど調理法はさまざまですが、大切なのは高温で加熱することです。解凍のスピードが遅いと、冷凍時と同様に食材の細胞内に大きな氷ができて細胞が破壊され、食感やうまみが損なわれてしまいます。フライパンや鍋をしっかり加熱してから調理しましょう。
2つ目に、冷蔵庫での解凍です。野菜や貝類などを除く、ほぼすべての食材に適しています。解凍までに時間がかかるのが難点ですが、ほとんどの食材はこの方法でおいしく解凍できます。朝食に使うものなら前の日の夜に、夕食に使うものなら当日の朝に保存袋ごと冷蔵庫の冷蔵室へ移しておくとよいでしょう。
3つ目は、氷水による解凍です。生の肉や魚に適しています。生の肉や魚は常温解凍すると劣化しやすいので、氷水で解凍するのがオススメです。保存袋に入れたまま氷水を入れたボウルに20分~60分浸します。氷を入れることで水温が1度程度になり、食材にダメージを与えにくい温度で解凍することができます。
4つ目は、流水での解凍です。下味をつけた野菜や、肉、魚に適しています。ボウルに保存袋を入れて、流水をかけて解凍します。氷水解凍よりも少し味が劣る場合がありますが、短時間で解凍できるのがメリットです。下味がついている野菜や肉、魚など、多くの食材に使えます。
5つ目は、常温での解凍です。和菓子類や枝豆などの解凍に適しています。どら焼きやカステラなどの和菓子類や茹でた枝豆など、一部の食品は常温で解凍しても美味しく食べられます。ただし、食中毒などのリスクを防ぐため、『涼しい所で解凍する』『長時間放置しない』という点を徹底してください。
解凍方法の、加熱解凍、冷蔵庫解凍、氷水解凍、流水解凍、常温解凍をうまく食材ごとに使い分けて、美味しい料理を作りましょう。
次に冷凍することの多い食品の上手な冷凍と解凍法をお伝えします。
まず、ごはんを冷凍するときは、炊きたてのご飯をすぐに冷凍することが鉄則です。米の炊きたては粘り気や風味を感じますが、冷蔵保存すると水分が抜けて、硬くパサパサした食感になってしまいます。そのため、炊けたらすぐに密閉容器に入れたり、ラップで包んだりして冷凍しましょう。炊き込みご飯などを冷凍するときも同じ要領です。解凍するときは、電子レンジで加熱解凍すると、ほぼ炊きたてと同じ風味が楽しめます。
肉類や魚類はそのまま冷蔵庫に入れておくと乾燥と酸化が進んで、風味が落ちやすいので、買ったその日に冷凍しましょう。肉なら水気を拭いて、ラップでしっかりと包み、保存袋に入れて平らにして冷凍します。塊肉なら、使いやすい大きさに切ってから冷凍しましょう。魚は塩をふって身を引き締めてから冷凍すると、身が崩れにくくなります。また、肉も魚も調味料で味を付けてから冷凍するのもオススメです。解凍したら焼くだけで良いという手軽さや食材にからんだ調味液が乾燥と酸化を防ぎ、しっとりジューシーになります。
最後に、冷凍することで美味しくなるものや食感が変わってひと味違う料理ができるものを紹介します。
まず、キノコ類やシジミは冷凍することでうまみがアップします。椎茸やしめじ、エノキタケなどのキノコ類はうまみ成分のグアニル酸が増加し奥行きのある味わいになります。また冷凍によって繊維が壊れ、出汁が出やすくなるので、スープにすると絶品です。シジミはオルニチンというアミノ酸が冷凍前の約8倍に増加します。みそ汁などに使うといつもよりうまみがアップしているのが感じられますよ。
豆腐やこんにゃくは冷凍することで食感ががらりと変わります。木綿豆腐なら高野豆腐のようなしっかりとした食感に、絹ごし豆腐なら湯葉を重ねたようなもちもちした食感になります。流水解凍してからフライパンで焼いて豆腐ステーキにしたり、そぼろ状にして炒めたりすれば、肉のような食べ応えが生まれます。
また、こんにゃくはスポンジ状のコリコリとした歯ごたえになり、炒め物などにすると、ホルモンのような食感が楽しめます。
冷凍をすることで、料理の幅が広がったり、調理時間の短縮にもなりますので、皆さんもぜひ上手に冷凍と解凍をして、お料理を楽しんでください。