犀南保健センター

　寒い日が続いておりますが、みなさん体調はいかがでしょうか。
　気温が下がり空気が乾燥するこの時期は、インフルエンザなどの感染症が流行する時期になります。そこで、今回は感染症予防をテーマに『インフルエンザ』と『ノロウィルス』についてお話いたします。


　まずはインフルエンザです。普通の風邪と違い、インフルエンザウィルスによっておこる病気で、症状や感染力も強く時に重症化して命に関わることもある感染症です。潜伏期間は１～２日で、３８度以上の発熱、寒気、頭痛、関節痛、筋肉痛、だるさなどが比較的早く出現し、その後に鼻水・咳などの呼吸器症状が出てきます。普通の風邪と比べて、全身症状が強いことが特徴です。
抵抗力の弱いお子さんやご高齢の方は重症化しやすいため、より注意が必要です。ただし高熱が出なくてもインフルエンザに感染しているということもありますので、関節痛やだるさなどの症状が急に出てきた場合は受診をおすすめします。治療に使われる抗インフルエンザ薬は発病から４８時間以内に使用した場合に効果を発揮します。感染したかなと思ったら早めに受診しましょう。

　インフルエンザ対策は『かからないこと』『うつさないこと』が大切です。
　インフルエンザを予防する有効な方法としては次の５つのポイントがあります。

　1つ目は流行前の予防接種です。予防接種をすることでインフルエンザウィルスに感染した後に発症する可能性を減らす効果と、症状が出た場合の重症化防止に有効と報告されています。

　２つ目は外出後の手洗いです。流水・石鹸による手洗いは、手などについたインフルエンザウィルスを物理的に除去するために有効です。またアルコール製剤による消毒も効果があります。

　３つ目は適度な湿度を保つことです。空気が乾燥すると感染しやすくなりますので、特に乾燥しやすい室内では加湿器などを使って５０～６０％程度の湿度に保つことも効果的です。

　４つ目は休養と栄養をとることです。インフルエンザにかかりにくい体を作るために、十分な休養とバランスのとれた食事を日頃から心がけましょう。

　５つ目は人ごみや繁華街への外出を控えることです。インフルエンザが流行してきたら、特にご高齢の方や基礎疾患のある方、妊婦、体調の悪い方などは人ごみへの外出を控えましょう。人ごみへの外出の際はマスクの着用が効果的です。


　もしインフルエンザにかかってしまった場合はどうしたらよいでしょうか。インフルエンザにの感染力は普通の風邪とは比べものにならないほど強力です。
　まずは安静にして休養をとりましょう。特に睡眠をとることが大切です。発熱により脱水症状をおこしやすいため水分はこまめにとりましょう。また外出を避け無理をして学校や職場などに行かないようにしましょう。休んでいる部屋から必要以上に出ないようにし、家族や周りの人にうつさないように咳エチケットを徹底しましょう。

　咳エチケットのポイントは３つです。

１．咳やくしゃみの際はティッシュなどで鼻と口を押さえ、他の人から顔をそむけます。

２．咳やくしゃみが出る時はできるだけマスクをつけます。とっさの咳やくしゃみの際にマスクやティッシュがない場合は、口を袖口で押さえ、ウィルスを飛散させないようにしましょう。

３．鼻水・痰などを含んだティッシュはすぐに蓋つきのゴミ箱かビニール袋に捨て、手のひらで咳やくしゃみを受け止めたときはすぐに手を洗いましょう。

　また、熱が下がっても２日くらいは人にうつしてしまう可能性があるので注意しましょう。特に小さなお子さんや未成年者がインフルエンザにかかった時は、急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、うろうろ歩き回るなどの行動を起こすおそれがあります。自宅で過ごす場合、インフルエンザと診断され治療が始まった後、少なくとも２日間は小さなお子さんや未成年者を一人にしない配慮が必要です。


　つづいて、ノロウィルスについてお伝えします。
ノロウィルスによる食中毒は1年を通してみられますが、１２～１月がピークになっています。
　この時期ぜひ気をつけていただきたい感染症の一つです。食中毒の原因となるほか、感染性胃腸炎の集団感染を引き起こします。その感染力はとても強力で少量でも感染します。潜伏期間は１～２日で、主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、軽い発熱です。通常はこれらの症状が１～２日程度続きますが、その後の後遺症はありません。また、感染しても症状がない場合や軽い風邪のような症状のみの場合もあります。さらに、回復後も長ければ１か月程度は便の中にウィルスが排泄されるため、注意が必要です。

　ノロウィルスは最終的には口からウィルスを取り込むことで感染します。ウィルスが口に入るまでの経路と、その予防策は大きく分けて３つあります。

　経路１は人から人です。感染者の嘔吐物や便を触った手や指についたウィルスが口の中に入り感染します。また空気中に飛び散ったウィルスを含んだ排泄物の細かい粒子を口に吸いこんだり、感染者が触れたドアノブや蛇口に触れた指からウィルスが口に入ることで感染することもあります。

　経路２は人から食べ物、そこから人です。感染者が調理した食べ物や感染者や汚染された食べ物が触れた調理器具から食べ物にウィルスがうつり、それを食べることで感染します。

　経路３は食べ物から人です。2枚貝などウィルスが蓄積した食べ物を十分に加熱せず食べることで感染します。


　続いて予防策についてお話します。

　予防策１は手洗いです。手洗いは感染症予防の基本です。石鹸自体には手や指についたウィルスを殺す力はありませんが、手からウィルスをはがしやすくする効果があります。石鹼をしっかり泡立てて、洗い残しの多い指や手のひらのしわの間、つめの間、手首などもよく洗い、最後はきれいに洗い流しましょう。日頃から爪は短く切って、手を洗う前には指輪や時計を外しましょう。便や嘔吐物を処理した後はもちろん、調理・配膳前やトイレの後、外出から戻った後は必ず手洗いしましょう。

　予防策２は便や嘔吐物の処理方法です。ウィルスを含んだ細かな粒子から感染を防ぐためには、便や嘔吐物を密閉して消毒殺菌することが効果的です。ノロウィルスに対するアルコール消毒剤の効果は不十分であるため、消毒には次亜塩素酸ナトリウム消毒液を使いましょう。ペットボトルと濃度５％の台所用塩素系漂白剤で作ることができます。５００mlのペットボトルにキャップ2杯台所用塩素系漂白剤を入れ、そこに水をいっぱいに入れると完成します。
　嘔吐物などを処理する際は、窓を開けて換気をし、マスクと使い捨ての手袋を必ず着用します。その後嘔吐物や便があった場所は次亜塩素酸ナトリウム消毒液を浸した布などで拭き、１０分経ったら水拭きをします。ふき取った嘔吐物や便、手袋はビニール袋に密閉して捨て、処理が終わったらていねいに手を洗うようにしましょう。

　予防策３は食品の加熱殺菌です。
ノロウィルスに汚染されている食品でも、中心温度８５～９０℃以上で９０秒以上加熱すれば感染性はなくなるとされています。心配な方はカキなどの2枚貝を生で食べないでください。調理する場合は中心部までしっかり加熱するとともに、専用の調理器具を用意し、消毒も忘れずに行いましょう。調理器具は洗剤を使って十分に洗った後、０,０２％の次亜塩素酸ナトリウムで浸すように拭きます。まな板や包丁など加熱が可能なものは８５℃以上の熱湯で１分以上煮沸消毒します。調理する人は、下痢や嘔吐があるときは調理しないでください。症状が治まっても１週間程度はウィルスが排泄されている可能性があるため、直接食品を扱う作業はしばらく控えるようにしましょう。

　では、ノロウィルスにかかってしまった場合はどうしたらよいでしょうか。現在、ノロウィルスに効果のある薬やワクチンはありません。水分と栄養補給による対症療法で脱水や体力の消耗を防ぎながら回復を待つことになります。乳幼児やご高齢の方など、抵抗力の弱い人の場合、下痢による脱水症状がおきることがあります。ぐったりする、唇が乾燥するなどしたら、すぐに病院を受診してください。また嘔吐物がのどにつまることがあるため、注意が必要です。下痢止めの薬は回復を遅らせることがあるので、自己判断で飲まないようにしましょう。


　インフルエンザやノロウィルスだけでなく、様々な感染症があります。日頃から十分な栄養と休息をとり、感染症にかかりにくい身体をつくることが大切です。

　元気に冬を乗り切り、暖かい春を迎えるためにも、一人ひとりが感染症の予防対策に努めていきましょう。