取材ノート
「JAアワーより」
~世界の今を知って、SDGsに取り組もう~
JAグリーン長野 生活課 大日方瑞穂さん
今月のJAアワーは『世界の今を知って、SDGsに取り組もう』をテーマにお話します
SDGs(持続可能な開発目標)は、みんなが一丸となって、貧困や気候変動、差別などの課題を解決し、幸せな未来をつくっていこうという地球規模の挑戦です。皆さんも、街中やテレビなどでSDGsという言葉を耳にしたことがあると思います。SDGsは17の目標を掲げ、2030年までに達成しようというものです。達成するために残された時間は、6年余りとなりました。ここで、改めて世界の"今”を知って、SDGsを意識した生活へパワーアップしていきましょう。
まず、皆さんの『家庭』の暮らしから世界の”今”を想像してみましょう。皆さんの家庭にある当たり前の光景。しかし、地球規模でみると全然当たり前ではないことばかりです。どのように当たり前ではないのか、一つ一つ考えてみましょう。
一つ目に『水』です。世界人口の4人に1人にあたる約20億人の人たちは、安全に管理された衛生的なトイレを使えていません。そして、1日800人以上の子どもが、不衛生な水やトイレで感染症にかかるなどして命を落としています。また、皆さんはコロナ禍で、これまで以上にお子さんやお孫さんに『手を洗いなさい』と注意をしていると思います。しかし、後発開発途上国の10人に7人が、自分の家で手を洗うことができない環境に置かれています。
二つ目に『学校』です。子どもたちは、元気に登校していますか?『今日も学校かぁ』なんて気だるそうな子もいるでしょう。世界では、5歳~17歳のうち、5人に1人が学校に通えていません。15歳以上の6人に1人が読み書きができないそうです。では、学校に通えない子どもたちは何をしているのかというと、貧しい家を助けるために働いているのです。アフリカには、7,200万人以上の児童労働者がいます。
三つ目に『食べ物』です。現在、地球上の全ての人が食べるのに困らないだけの食料が生産されているにもかかわらず、8億2,000万もの人が飢餓に苦しんでいます。お金がないなどの理由で、食料が手に入らないのです。また一方で、世界全体では、食料の3分の1が捨てられています。日本でも522万トンの食品ロスが発生しています。2021年産の主食用米の生産量が約700万トンですから、その多さは看過できません。
四つ目に『スマートフォン』です。コロナ禍を契機に、オンライン化が進んでいます。でも、インターネットを使える人は、世界人口の半数ほどです。後発開発途上国では、10人に8人がインターネットを使えません。もし『公共料金の支払いは、スマホかパソコンで』となれば、それらを持っていない人は暮らしていけません。また、デジタル化が進むほど、スマホなどの廃棄物も増えるでしょう。日本の1人当たりの電子廃棄物の量は、世界平均の2,8倍です。
五つ目に『電気』です。なんとなくテレビを付けっぱなしにしていませんか?世界では、約1割の人が電気のない生活を送っています。アフリカのある地域では、10人に9人が電気を使えません。病院でさえ、電気や安全な水が使えない国が少なくないのです。世界の電力消費量を見ると、中国やアメリカ、インド、日本など10か国で約70%を占めているといいます。日本人1人当たりの年間電力消費量は、アフリカの14,5倍です。
『水』『学校』『食べ物』『スマートフォン』『電気』、これらは皆さんの暮らしでは当たり前でも、地球全体でみると全然当たり前ではないのです。
次に自分の暮らす”地域”の当たり前から、世界の”今”を想像してみましょう。
一つ目に『森林』です。森林は、私たちに山菜などの”山の恵み”をもたらすだけではありません。二酸化炭素を吸収してくれる大切な存在です。ところが、地球規模では1990年からの30年間で、1億7,800万ヘクタールの森林がなくなってしまいました。これは、日本の面積の4,7倍に相当します。世界的な人口増による食料増産の必要性などから、農場や牧場に姿を変えているのです。近年はペースが落ちているとはいえ、このおよそ10年では、1分間に約9ヘクタールの森林が消えていきました。
二つ目に『空気』です。自動車のエンジンをかけたまま休憩。地域によっては条例違反になることもあるそうです。二酸化炭素などの温室効果ガスで地球の気温が上昇中です。日本では、車から排出される二酸化炭素は、全体の16%を占めます。地球温暖化が進めば、干ばつで食べ物や水が不足したり、強力な台風が発生したりします。また、海面が上昇し、海抜が低い島国の人が住めなくなります。2020年には、南極で20℃超えを記録しました。これは日本の初夏のような気温です。
三つ目に『海』です。世界経済フォーラムは、2050年には海洋プラスチックごみが魚の量を上回ると予測しました。海は魚介類や化石資源の宝庫です。風力などの自然エネルギーの供給源でもあります。でも、海は大事にされていません。例えば、アメリカでは毎年350億本ものプラスチックボトルが投棄されているそうです。海は世界とつながっています。自分の不注意で落としたごみが、他国の海を汚しているかもしれません。
四つ目に『川』です。海洋プラスチックごみの約9割はガンジス川などの10の大河で投棄されているといいます。私たちは、川も大事にしていません。日本では、高度経済成長期に、企業が川などに有害物質を流し、多くの犠牲者を出した公害が大問題になりました。現在も急激な経済成長を図る国々で公害が発生しています。イギリスの医学誌によれば、深刻な公害による水質汚染が原因で、年間約180万人が亡くなっているそうです。
最後に五つ目『子ども』です。夫婦げんかも子どもへの心理的虐待になるって知っていますか?国連によると、世界中で10億人もの子供が身体的・精神的な暴力に遭っています。これは子供の約4割に当たります。日本でも、子どもへの暴力が相次いで報じられています。2020年度に児童相談所が対応した虐待相談は、過去最高の20万5,044件と、5年間で倍増しました。
以上が一部ではありますが、世界の”今”です。いかがでしたか。自分には当たり前のこと、地域にとって当たり前のことが地球規模でみると、すべてが当たり前ではないのです。『これくらいなら大したことないだろう』『私が変わったくらいじゃ何も変わらないだろう』と思うかもしれません。ですが1人の意識が変われば、必ず周りも変わります。1人の行動が、SDGsの達成に向けて少なからず貢献しています。SDGsの達成に向けて、今日からでも変わっていきましょう。