取材ノート
「JAアワーより」
~スマホとの上手なつき合い方~
JAグリーン長野 生活課 大日方瑞穂さん
今月のJAアワーは『スマホとの上手なつき合い方』をテーマにお話します
今やほとんどの人がスマートフォンを持つ時代になりました。2021年の調査では、60代のスマホ所持率は8割、70代でもすでに6割を超えており、シニアの間にもずいぶん浸透していることが分かります。しかしスマホと二つ折りの携帯電話いわゆるガラケーでは、操作方法が大きく異なることも事実です。スマホを始めた高齢者は、『おかしな画面が出てきた』『このメッセージはどうしたらいいの?』など、不安でパニックになってしまうこともあります。
せっかくの便利なスマホですから、ぜひ使いこなして生活を快適にしていきたいものですね。無理なく使い方を覚えるためには、本人の努力だけでなく、周囲のサポートも欠かせません。高齢者がスマホを持つメリットや教え方のポイントなど、スマホデビューを成功させるコツをご紹介していきます。
高齢者がスマホを使うメリットとして、まずはなんと言ってもスマホはガラケーに比べて画面が大きく、見やすい点が魅力です。細かいところを見たい時には、画面を簡単に拡大することもでき、地図を見たり調べものをする際などもグンと快適になります。カメラも高性能なので、ビデオ通話を手軽に楽しめたり、高画質な写真・動画も簡単に撮影することができます。
また、コミュニケーションアプリ『LINE 』を使うことで、家族や友人とのコミュニケーションが増えるのも大きな楽しみです。メールと違って短いメッセージで気軽にやり取りできたり、グループで一斉に情報を共有できたりと、電話やメールとは違った側面からコミュニケーションを補完してくれます。
文字入力が煩わしいと感じる高齢者にとっては、話しかけることで文字入力ができる音声入力機能もメリットの一つ。今日の天気や目的地までの行き方なども、便利に検索して情報を得ることができます。そのほかにもスマホに搭載されているGPSを利用した、居場所確認や安否確認などに使えるアプリなども、高齢者には安心材料になることでしょう。
スマホを持つことは高齢者にとってもメリットはありますが、それでも高齢者がスマホ操作を難しく感じるには、いくつか理由があります。
一つ目に、IT 用語になじみがないことです。スマホの使い方を説明するときには、『アプリ』『ダウンロード』『アカウント』など、カタカナ言葉が多くなりがちです。しかしこれらの専門用語は高齢者にとってはまったくなじみのない言葉です。早口で1度や2度説明されたくらいでは頭に入ってきません。繰り返し説明されても理解できないと、『どうせ無理』『もう嫌だ』と拒否反応を示すようになってしまいます。そんな時は、『アプリをダウンロード』は『このスマホで〇〇をするための準備として、データを貰う作業』などと言い換える等、なるべくかみ砕いた日本語で、ゆっくりと伝えるようにしましょう。また操作方法は電話口で説明しても伝わりにくいため、隣について実際にやって見せる方が、お互いにストレスなく伝えることができます。
二つ目に、タッチパネルでの操作に慣れていないことです。スマホはボタン操作のガラケーとは違い、画面にタッチして操作するタッチパネル方式です。同じ画面のなかでも触る場所が変われば違う操作になるため、『押し間違えそうで不安』という高齢者もいます。また、タッチパネルは指先の静電気に反応するため、指が極度に乾燥していると反応しないこともあります。高齢者の皮膚は乾燥しがちなので、反応が悪ければおしぼりを使ったり、息を手に吹きかけて保湿してみてください。画面の保護シートに汚れや浮きがないか確認してみるのも有効です。
三つ目に、詐欺などを過度に不安がることです。『変なところを押してしまって、詐欺にでもあったらたいへん』という不安から、スマホを敬遠する高齢者もいます。せっかく操作を教えても、普段から触らないとすぐに忘れてしまい、宝の持ち腐れになってしまうことも。たしかにインターネット上でさまざまな情報に無防備に触れていると、架空請求やフィッシング詐欺など、思わぬトラブルに巻き込まれることもあります。『不審なメールやメッセージは絶対に開封せず無視する』『むやみにアプリをダウンロードしない』といった基本的な対策は本人に徹底してもらう必要があります。そのほか、セキュリティソフトを導入しておくのも有効です。こうした対策さえきちんとしていれば、スマホだからといって過度に恐れることはありません。安心して使ってもらえるように周囲が説明と対策を行いましょう。
四つ目に、自分には必要ないと思っていたり、新しいことを覚えるのが億劫と感じていることです。一番大事なことは、本人のやる気です。『スマホを使えるようになりたい』という意欲がなければ、どんなに熱心に教えられても覚えることができません。やる気を持ってもらうためには、『本人がスマホで何がしたいか』を知っておく必要があります。例えば本人は健康管理アプリに一番興味があるのに、LINEの使い方から教えてもなかなか覚えられません。誰にでも『実はスマホを持ったらこれがやりたかった』というものがあるはずです。まずは一番やりたいことから始めて、操作に慣れてから必要なアプリの操作を覚えてもらうようにすると、無理なく上達していく事ができます。
スマホを持つことにまだ抵抗がある方がいるかもしれませんが、老化防止にスマホを持ってみるのもいいかもしれません。
高齢者が要介護状態になる要因の一つに、『引きこもる』ことがあります。一日中家の中で過ごすことによって運動不足になり、お腹が空かないために食欲がわかず栄養不足になり、筋力が落ちて転びやすくなったり、転んだ時に骨折して、そのまま要介護になってしまうパターンはとても多いのです。また、引きこもることで脳への刺激が減ってしまうことも大きな問題になります。脳は使わないと老化が進んでしまいます。認知症を予防するには、五感を通じて脳に様々な刺激を与えたり、新しいことにチャレンジして適度な負荷をかけることが大切です。
高齢になれば誰でも程度の差こそあれど、認知機能や手先の器用さが衰えてくるものです。そんななかで『スマホ』という未知の道具に取り組み、使いこなせるよう努力することは、とても効果的な脳トレになります。
周囲の家族も操作方法を繰り返し聞かれてイライラすることがあるかもしれませんが、『何度も説明したでしょ』『何やってるの』など、責めるような言葉は使わないようにしましょう。本人の心が折れないように温かく見守りながら、いつまでもアクティブなおじいちゃん・おばあちゃんでいられるように応援していきましょう!