取材ノート
「今月の健康」
~ 自殺予防
犀南保健センター
寒さも和らぎ春めいてきましがた、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は、3月の自殺対策強化月間に関連して自殺予防についてお話します。お話の中で自殺やそれに関連した言葉に抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、現在生きづらさを抱えている方や、身近な人・周りの人などにぜひ聞いていただければと思います。
3月は、進学や卒業、就職や転勤、退職、引っ越しなど生活環境が大きく変動する時期で、ストレスを感じやすく、自殺者数が多くなる傾向にあります。このことから、国は3月を『自殺対策強化月間』としています。
自殺の原因は、さまざまな要因が複雑に関係しています。こころが元気な時は、悩みがあっても『誰かに相談しよう』など解決策を考えられます。しかし、様々な原因が重なり心理的に追いつめられると『もう自殺するしか解決策はない』と思ってしまいます。つまり、自殺は個人の自由な意思や選択の結果ではなく、その多くが『追い込まれた末の死』であると言えます。そして社会的な問題として、長野市では取り組んでいます。
まずは自殺の実態についてお話します。警察庁の自殺統計によると、全国の自殺者数は、平成10年に3万人を超え、平成15年に最多となりました。その後、平成22年に減少に転じ、その後減少傾向となっていましたが、令和4年では再び増加傾向となり、年間21,881人となっています。
長野市の自殺者数は、平成22年の81人をピークに減少し、60人前後を推移しており、令和4年は62人でした。特徴として、男性では40代から60代に多く、女性は60代以上に多い傾向があります。また、男性の自殺者数が女性に比べ多い傾向があります。
3月はストレスを感じやすい時期とお話しましたが、ストレスというとどんなことをイメージしますか。ストレスと聞くと嫌なことやつらいことを連想される方が多いかもしれません。しかし、実はうれしいことや楽しいこともストレスの原因になります。ストレスが全くない生活はありません。だからこそ、ストレスと上手に付き合っていくことが大切です。
ストレスが強くかかる前にストレスと上手に付き合うために、対処術を見つけましょう。
ストレス対処術の例として
1.質の良い睡眠をとり、エネルギーの充電をする。そのため一つの方法として、ぬるめのお湯で就寝の1時間前に入浴する。朝陽を浴びる。運動は就寝の3時間前までにするなどがあります。
2.二つ目。何かに1点集中して取り組む。思いっきり泣ける映画を観たり、大笑いをするなど、今と全く違う感情を味わうと、気持ちがリセットされ、すっきりします。その他、アロマテラピーや普段行ったことがない場所に出かける。美術館やコンサートに行く。土いじりや散歩など普段使わない五感を使うなど気分転換をする。などです。
3.三つ目として、深呼吸や大笑いをして心身をくつろがせる。筋肉を緩め、呼吸を落ち着かせ、自律神経の働きを整えることでリラックスできます。自然に力が抜ける、深くゆっくりとした呼吸(腹式呼吸)は心身を落ち着かせ、精神を集中させるのに役立ちます。また大笑いをすると、自然に腹式呼吸になり、ストレス発散になります。
4.考え方の傾向を見直すという方法もあります。例えば、あなたが朝、外に出ると、近所のAさんが庭いじりをしている姿が見えました。あなたから朝の挨拶をしたのに、Aさんは顔をあげようともせず、返事がありません。あなたはこのような状況の時、どんな感情を持ちますか。
A.何か嫌われるようなことをしたのだろうか。機嫌を損ねることをしてしまったんだろうかと不安になる。
B.Aさんはいつもこうだ。無視して自分をバカにしていると怒りがこみ上げる。
C.きっと私が何か気に入らないことをしてしまったのだ。なんで自分はいつも、こう近所付き合いが苦手なんだろうと落ち込む。
D.庭いじりに集中しているのだな、と特に大きく感情は変わらない。
A~Dはすべて感情を表しています。日常生活はこのような出来事の連続で、その都度感情がわいてくるものですが、どんな感情を持つかによって、本人が感じるストレスの度合いは変わってきます。また、これは人によってかなり違いがあります。
感情がわいたその先はどうなるのでしょう。例えば不安な感情が生まれると、ドキドキしたり、手に汗をかいたり、胃が痛くなったりします。つまり、身体が変化します。それだけではなく、近所付き合いを避けるようになったり、家に引きこもるようになったりするなど、行動にも影響を与えます。
思考・感情・身体・行動は密接に関係しあっています。こうした誰もが持つ認知の癖。これに気づき、修正することができれば、負の感情を変え、さらには行動も変えることができます。
ストレスが強くかかっているときにあらわれる症状としては、『悲しく憂鬱な気分』、『何事にも興味がわかず楽しくない』、『疲れやすくだるい』、『寝つきが悪く、朝早く目が覚める』、『食欲がなくなる』、『気分が落ち込んで、やる気が出ない』などがあります。
こんな心のSOSに気が付いた時は、周りに相談をしたりして、SOSを出していくことも大切です。勇気がいりますが、援助を求めることはとても大切なことです。
時には周りの方が本人の変化に気づく場合もあるでしょう。周囲が気付けるサインとしては、以前と比べて表情が暗く元気がない、仕事や家事がうまくいかない。お酒の量が増える、周りの人との交流を避けるようになる等があります。普段の姿を知っている身近な人だからこそ、いつもの様子と違うなと気付けることがあるかもしれません。いつもと違う様子に気づいたら、声をかけてみてください。例えば『疲れているようだけど、眠れている?』『食欲がないようだけど、何かあったの?』といったように、『私にはこんな様子に見えるけど、どうかした?』といった伝え方であれば、声をかけやすいかと思います。
自殺の予防には、自殺に傾いている人を孤立させないことが大切です。あなたのことを気にかけている、心配しているというメッセージを送ることで、助けてくれる人の存在に気づいてもらうことができます。声を掛けたら相手の話にじっくりと耳を傾けることが必要です。
支援をするための5つのポイントがあります。
1.気づく 2.声をかける 3.話を聴く 4.支援につなぐ 5.見守る です。
悩んでいる人の自殺サインに気づき、その人に声をかける。そして、その人の悩みをよく聴き、必要に応じて専門の相談機関へつなぐ。という流れです。このように、その人に寄り添い見守る方をゲートキーパーと言います。ゲートキーパーにはどなたでもなれます。そして、地域の家庭、職場や学校など、生活のあらゆる場面で活用することができます。ご希望の団体には、こころの健康やゲートキーパーについて学べる出前講座を行っていますので、長野市保健所健康課までお問い合わせください。
また、相談を受けた人自身も一人で抱え込まず、他の人に相談したり、専門機関につなぐことで、自分自身を見守ることができます。
最後に、長野市保健所に『こころの相談専門電話』があります。
悩んでいる人も、悩みを聞いている人も相談できます。一人で抱え込まずに、まずは相談してみてください。こころの相談専門電話は
電話番号 026-227-4455 です。
相談時間 平日午前9:30~午後4:00
また、市内の各保健センターでも心の相談をお受けしております。
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