取材ノート
「JAアワーより」
~健康長寿になるために、腸の若返りを~
JAグリーン長野 生活課 藤澤瑞穂さん
今月のJAアワーは『健康長寿になるために、腸の若返りを』をテーマにお話します
食べ物を消化して、栄養を吸収する『腸』。腸の役割はそれだけではなく、腸に住む菌の『腸内細菌』が食べ物の消化・吸収を通じて、体の調子や『老い』に影響を与えています。見た目がなんとなく老けたな、体が疲れやすいな、と何かと『老い』を感じている人、それは腸のせいかもしれません。腸のことをもっとよく知って、腸から若返りましょう。
腸から若返るためには3つのキーワードがあります。
一つ目が『酪酸菌』です。酪酸菌は老化を抑える菌で、『長寿菌』とも言われ、若返りの重要なカギとなる菌です。
二つ目は『日々の食習慣』です。腸内細菌を元気にする『腸活』は食物繊維たっぷりの食事など、日々の習慣にかかっています。
三つ目は『食物繊維』です。酪酸菌のエサとなる食物繊維で、現代の日本人には圧倒的に不足していると言われています。
三つのキーワードについてこのあとお話します。
最初にお話したように、腸は食べ物を消化したり、栄養を吸収したりする働きがありますが、それだけではありません。腸には1000種類以上、100兆個の『腸内細菌』と呼ばれる細菌が住んでおり、体調に影響を与えています。そして、腸内細菌の多くは大腸に住んでいます。
腸内細菌の中でも特に注目したいのが、先ほどのキーワード一つ目の酪酸菌です。酪酸菌が生み出す酪酸は、筋肉の減少を防ぐ働きがあります。見た目が若く元気な人の腸には、この酪酸菌が多く住むことが分かってきました。
酪酸菌のように人に良い影響を与える細菌のことを、『善玉菌』といいます。この善玉菌が活発であることが、『良い腸内環境』の条件です。
ここで、腸内に住む代表的な細菌を覚えておきましょう。まず、腸に良い働きをする腸内細菌の総称で『善玉菌』です。善玉菌にもたくさん種類がありますが、その中で3つご紹介します。一つ目に『酪酸菌』です。酪酸菌は大腸に生息し、老化防止に効果のある酪酸を作り出します。さらにほかの菌を育て、腸内環境を良くします。二つ目にビフィズス菌です。ビフィズス菌は日本人の腸にもともと多く住む細菌で、大腸に生息し、悪玉菌の増殖を抑えます。しかし加齢により減少します。三つ目に乳酸菌です。小腸の下部から大腸に生息し、腸内を酸性にすることで悪玉菌の増殖を抑えます。また腸の運動を促進し、便通をよくします。以上が腸に良い働きをする善玉菌の代表です。
善玉菌以外の細菌ですが、まず、中間菌です。中間菌、別名『日和見菌』は腸内細菌の中で最も数が多い菌で、腸や体の状態によって善玉菌・悪玉菌のどちらかに加勢し、同じように働きます。
悪玉菌は、人体に悪影響を与える腸内細菌の総称です。大腸菌などの悪玉菌は腸内で腐敗すると、大腸がんなどの病気のもとになります。
若々しく元気な人の腸内は、善玉菌の勢力が強く、中間菌が善玉菌の働きをしているため、悪玉菌は少ないです。
逆に、体の調子が悪く、老け込んで見えてしまっている人の腸内は、善玉菌が少なく、悪玉菌の勢力が強くなっていて、中間菌も悪玉菌に味方しているかもしれません。
腸内環境の悪化が病気や老いを引き起こす原因かもしれません。例えば、疲れやすさは悪玉菌が増えることで、酪酸菌の働きが弱まり、筋力が低下することで起きます。他にも肌荒れは、悪玉菌から出る有害物質が血液と共に全身に運ばれ、肌に炎症を起こすことで生じます。このように、老いと腸は密接に関係しているのです。
次に、腸から若返るためのキーワード2つ目の『日々の食習慣』についてです。腸内細菌を育て、腸内環境を改善する『腸活』。それには、食事を意識することが大切です。次の4つの食品や栄養素は、善玉菌のエサとなり、腸内環境を改善してくれます。
一つ目は、発酵食品です。発酵食品や発酵調味料は、善玉菌のエサとなります。発酵食品に多く含まれる乳酸菌は、免疫細胞を刺激し、免疫力を向上させます。
二つ目は、オメガ3系脂肪酸です。善玉菌のエサになり、動脈硬化を防ぎ、認知機能を向上させます。体内では作ることはできず、魚介類やアマニオイル、えごま油などから摂取することができます。
三つ目は、オリゴ糖です。整腸作用があり、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌のエサになることで、腸内環境を改善します。タマネギやバナナに多く含まれます。
四つ目は、腸から若返るためのキーワード3つ目にもあった、食物繊維です。食物に含まれ、消化されないまま腸に届く物質で、『第6の栄養素』と呼ばれます。大腸の運動を促進し、便秘を改善する働きがあります。
以上4つの食品や栄養素を普段の食事にプラスし、腸内細菌を育てましょう。
一方、スナック菓子は脂質や塩分を多く含み、悪玉菌を増やします。食べ過ぎには注意が必要です。ただ腸に良いからといって同じものばかり食べてはいけません。『よい腸内環境』とは、腸内細菌が多様で、量のバランスが保たれている状態です。特定の食品偏ることなく、多様な腸内細菌を育てましょう。
最後に、腸から若返るためのキーワード3つ目の食物繊維についてです。食物繊維は、血糖値の上昇を抑えたり大腸がんのリスクを低下させたりします。さらに、酪酸菌が酪酸を生み出す時のエサにもなるのです。食物繊維は、豆、海藻、根菜・キノコ、また麦や玄米などの精白していない穀物に多く含まれます。
食物繊維を普段の食事にプラスするコツは3つあります。一つ目は茶色い穀物を食べましょう。精白する前の穀物、いわば『ぬか』が付いている茶色い穀物には、食物繊維が多く含まれます。玄米や分づき米、小麦なら全粒粉などにあたります。
二つ目にみそ汁は具沢山にしましょう。みそ汁は、ワカメ・アオサなどの海藻、ゴボウ、ダイコンといった根菜や芋など、食物繊維豊富な食材をおいしく取り入れやすいメニューです。
三つ目におやつにはフルーツを食べましょう。フルーツも食物繊維を多く含みます。とくに、キウイフルーツは食物繊維たっぷりです。手軽に食べたいなら、ドライフルーツでもいいでしょう。
健康長寿のカギである腸のために食生活を見直して、いつまでも若々しい見た目と体づくりに取り組んでみてください。