取材ノート
「今月の健康」
~ 血圧について
犀南保健センター
暑い日が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今日は、『血圧について』お話したいと思います。
さて、血圧の出発地点はどこでしょうか? 心臓なのです。心臓に手を当ててみますと、ドクッドクッという音がしますね。それは、心臓が血液を『大動脈』へ送り出している『拍出』の音です。その1回のドクッで、左心房から細い『細動脈』へ、さらに『毛細血管』へ血液が送られ、全身の細胞に酸素や栄養素を届けます。その後、血液は二酸化炭素や老廃物をうけとり、次の臓器へと運び去ります。
その血液が流れる時に、血管の壁に当たる圧力が『血圧』なのです。この血圧の値は、『心臓から拍出される血液の量』と『血管の太さや弾力性』に影響されます。
血液の量が多いと、そのまま血管にかかる圧力は大きくなり、結果血圧が上がります。
また、血液の量は同じでも、血管の内側が狭いと、血圧は上がります。血管の弾力性がなく硬い場合も血圧は上がることになります。
この、『血液の量』と『血管の太さや弾力性』に関係する要素が7つほどあります。
まずはじめに1『塩分』です。
『塩分』が体の中に入ると、血液に吸収され『電解質』として働きます。電解質は、細胞が働けるように電気を起こし、筋肉を動かしたり、情報を伝達する役割があります。海水の塩分濃度は3%ですが、人間の体液の塩分濃度は常に0,9%で維持されています。少しでも変化すると死んでしまうので、『腎臓』という臓器で調整しています。『腎臓』では余分な塩分を体外に排出したり、再吸収して体に戻したりして、一日3gの『塩』の摂取でも生きていけるように調整しています。ところが、食事から『塩』を摂り過ぎると、血液中の『塩分』が多くなります。すると、血液塩分濃度を0,9%になるように水が呼び込まれます。結果、血液量が増えることになり、心臓の仕事が増え、血圧が上昇することになります。また、体は水膨れすると困るので、尿からどんどん排出しようとします。尿から必要な成分を再吸収する仕組みに進化した腎臓ですが、塩を排出しようとするためにとても苦労しているのです。
そして2家族歴です
両親が高血圧だった、糖尿病だった、心血管疾患があったなどの方は当てはまります。親の片方が高血圧である場合、子どもは3人に1人が高血圧になる可能性があると言われます。通常は摂り過ぎた『塩分』は尿の成分として排泄しますが、遺伝的な要素で、尿の中に『塩分』が捨てにくくて、体の中に戻りやすい方がいます。『塩分』が体内に多くなると、先にお話したように、心臓から送り出される血液量が増加し、血圧が上昇することになります。
次に3アルコールです。
アルコールも水を呼びます。血液の量が増えることに関係します。
4運動不足
運動不足は、肥満や血管の弾力性などと関係してきます。
5肥満
全身の血液量は体重の13分の1と言われています。体重が増えれば、血液量が増えます。血液量が増えると血管を押す圧力つまり『血圧』が上がり、血管の壁の内皮細胞が傷つきます。傷ついたところに血小板がきて修理をして、これを繰り返すうちに血管が固く狭くなります。内側が狭くなった血管に血液を流すために、さらに『圧』が必要になり、心臓がさらに頑張って送り出すことになります。
6たばこ、7交感神経です
過労や緊張、睡眠不足などで交感神経が活発になると血管は収縮します。また喫煙も血管を収縮させます。血管が収縮するという事は、血管の太さに影響していると言う事で、血圧が上がる原因となりますね。
血圧は、通常は夜間に低下し、早朝に再上昇します。特に明け方は、血液をサラサラさせる物質も出にくく、また夜中に汗をかいて脱水になりやすいので、血液が固まりやすく、血栓ができやすくなります。血栓ができると、脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなります。発症のピークは午前8時前後と言われています。
血圧は常に変動しているものですが、1日を通して正常に変動させることが、大事な臓器である脳・心臓・腎臓を守ることにつながります。
繰り返しになりますが、脳と心臓と腎臓の3つは生きていくのにとても大事な臓器で、守っていくことが必要です。しかし、この『脳』『心臓』『腎臓』の3つとも共通した弱さをもっています。それは、血管が直角に曲がっていたり、直径3~5mmの太めの血管から急に直径0,5mmほどの細い血管になるため、血圧が高いと血管にかかる負担が大きくなり、血管が傷みやすいのです。
もし、血圧が高い状態が続いているならば、大切な臓器の血管である細動脈が傷つき、硬くならないうちに、血圧のお薬を飲むことで、『脳』『心臓』『腎臓』を守ることができます。
お薬は予防薬なんですね。
ただ、いくらお薬を使っていても、生活習慣によっては、薬の効きを弱めたり、血圧とは関係なく脳梗塞・脳出血や心筋梗塞を増やしてしまうこともあります。そのためには、やはり生活習慣を見直していくことも重要となります。
血圧を良い値にコントロールすることは、一生使い続ける臓器の長持ちにつながります。現在、国保特定健康診査が実施されています。健診を受けて、ご自身の健康や日ごろの生活をもう一度考えてみませんか。