有線わくわく川柳 投句作品集 【題 物価】


                    2025年10月

                    主催:篠ノ井有線放送(SYH
                    選者:元国語科教諭 中川あき子さん


- 入賞作品 -
【 三 才 】 天・地・人

 天  月ごとに 渋沢さんの価値 軽くなる      小 紅
 地  新聞の 記事より先に チラシ見る       伊 藤 房 子
 人  午後7時 閉店間際の お買い物        小 林 あさ子


【 五 客 】 1-5

1  見切り品 よせば良いのに また買った      宮 尾 正 子
2  物価高 家庭菜園 ありがとう          岡 澤 千賀子
3  せつないな おかず2品の この食事       伊 藤 幸 一
4  物価高 捨てるゴミから ゴミ拾い        瀧 澤 明 美
5  10円で 買えるものって ありますか      茉崙(マロン)



【 平抜き 】 1-7

1  物価高 猫のエサまで ネビキシー       宮 尾 正 子
2  物価への挑戦 妻の腕まくり          竪 谷 致 之
3  公約に 好材料の 物価策           関  博 英
4  新総理 期待と諦め 物価高          久 保 幹 夫
5  物価高 対策手遅れ ステージ5        久 保 愛 子
6  売り場にて 財布と品物 にらめっこ      レモンサワー
7  ウナギから 穴子に変わる 回る鮨       小 林 一 雄 



【 投句作品紹介 】 (順不同)

軽々と 予想を超える 物価高         茉崙(マロン)
舌鼓 うなぎのぼりの うなぎ丼        飯 島 教 史
予想超え こっそり返し レジに立つ      飯 島 教 史
好きな菓子 これだけだっけ 減ったよね    えっちゃん
賃上げと 物価に悩む 経営者         竪 谷 致 之
節約の 機運高まり スマートに        関  博 英
物価より 食欲勝ってる 健啖ぶり       関  優 磨
高くてダメ にらまれべそかく ねだりっ子   関  優 磨
生産者 売るもの安く 買うもの高い      久 保 幹 夫
財布紐 ゆるめプレゼン 孫笑顔        岡 澤 千賀子
ああ嫌だ 値札みるたび ためいきが      伊 藤 幸 一
値は同じ 中身の量減り 今を知る       伊 藤 房 子
米がない 物が高くて 嫌気さし        伊 藤 達 也
物価高 さんま1匹 思案橋          久 保 愛 子
物価高 給与上がれば 物価上がる       瀧 澤 明 美
卵たか~ 1個減らして 茶碗蒸し       えっちゃん
せんべいの 袋変わらず 中身小さく      小 紅
物価高 畑のキャベツ 胸を張る        てるちゃん
物価高 試案のサイフ 右左          てるちゃん
もう嫌だ 運転するの 火の車         小 林 一 雄
高いのは もう沢山だ 広告の山        小 林 あさ子

  •  素敵な作品をありがとうございました。

                       ― 篠ノ井有線放送 

 

             解説/講評 元国語科教諭 中川あき子さん
- 審査講評 -

【 天(1位) 】  月ごとに 渋沢さんの価値 軽くなる

 一昨年、新札が発行されて1万円札の肖像が、長く親しんできた福沢諭吉さんから渋沢栄一さんに替わりました。
それほど馴染みのなっかた渋沢さんですが大河ドラマの主人公になったりしてすっかり有名になりました。
「日本の資本主義の父」と言われ、多くの銀行や会社の設立・経営に関わった方だそうです。
新しい1万円札は、肖像が浮き出る技術や鮮やかな色遣いで、初めて見た時は驚いたり感心したりしました。
 その渋沢さんの1万円札、羽が生えたようにすぐにどこかへ飛んでいってしまいますね。
あれも買いたいこれも買わなくちゃ、と考えていても、いつの間にかいなくなってしまってがっかりします。
 資本主義の父でも、どうにもなりません。
 ため息をつきながらの一句でした。

    
【 地(2位) 】  新聞の 記事より先に チラシみる 

 朝のダイニングキッチンのテーブル。それとも卓袱台でしょうか。
玄関のポストから持ってきた新聞を広げます。記事はさておいて、折り込み広告を1枚1枚、丹念に見ます。
あっちの店、こっちの店と比べ、少しでも安いものを探します。
店の方も、日替わりで目玉商品を決め、毎日買い物客が足を運ぶようにしているので、簡単には行き先を決められません。
遠い店でも安ければでかけます。
安い食材同士をを組み合わせて、献立を考え、頭を使います。
物価高の下、こうやって知恵を絞って1日1日を乗り切っているのですね。


【 人(3位) 】  午後7時 閉店間際の お買い物 

 スーパーで、閉店を知らせる音楽が流れる頃。20%オフとか半額値引きのシールが貼られた商品を買い物かごに入れます。
時には、シールを貼る店員さんの後をついていったり。
「フードロスを減らすのに協力しているのよ!」と言い訳してみたり。
しばらく前から当たり前になった、そんな光景が目に浮かびます。
「物価高」という言葉も「値引き」という言葉も入っていないのに、庶民のため息や、必死のやりくりが伝わってきます。




《講評》

 私事で恐縮ですが、毎月1日は、スーパーに行くのが恐怖です。
このところ、月が替わる度にものの値段が上がっているのです。
今回の川柳の応募締切の後のクリスマスやお正月。
ケーキ、フライドチキン、餅、数の子、みんな値上がりして楽しみも半分でした。
年末年始くらい贅沢したい、でもやはり節約しなくては、と悩みました。
選んでいいか、とても迷いました。
 今回寄せられた作品にも、買いたいけれどどうしようと迷ったり、安いもので我慢したり、といった寂しさわびしさを訴える句が目立ちました。
値段は変わらないのに中身が減っていてがっかり、という句には、思わず「そうだ、そうだ」と膝を叩きました。
 一方では、政治家に物価対策を期待しつつ、諦めているという句もありました。
 また、消費する側の自分だけでなく経営者や生産者の苦労を思いやる句もあり、この視点は貴重なものだったと思います。
 見切り品や安売りを利用したり、家庭菜園で野菜を作ったり、捨てるものを減らしたり、物価高に対抗して逞しく生きるみなさんの姿に励まされました。